時は「進み」、止まることはなく
オラクル教団とは、ゴールデンエイジとゼニスの戦いによって世界に溢れた「ゼロ」の力を使って、世界に平和をもたらそうとする宗教団体です。
教祖ヨミを中心として、かつて超獣世界にいたゴッドを復活させたゴッド・ノヴァ、教団が新たに作りあげた神オラクリオンを崇拝対象としています。
彼らの教義は「沈黙」と「停滞」。先の戦いによって荒れ果てた世界に平和を取り戻し、それらの保持を目的としていました。
沈黙や停滞は、変化がないからこそ、安心できるんですよね。
今ある状態から良くなることも、また悪くなることもない。
「ある日、彼は変わらないままの世界に、少しずつ飽いてきていました。いつか見た美しい世界は、いつの間にかいつも通りの陳腐な景観に成り下がっていました。変化が見たい。そう願った彼は、愚かにも自身で打ち込んだ錨を、引き抜きました」
「するとどうでしょう。その世界は、それまで圧縮されていた『経過すべきだった時間』を一瞬で経験し──彼の目の前で、消えてなくなりました。その世界の寿命は、当に過ぎていたのです。留めている間に、その世界は滅んでいたはずだったのです」
「彼の我がままによってその世界は生き長らえさせられていただけで、彼が錨を抜いた瞬間に、その世界が滅ぶことが確定してしまったのです。自分の身勝手な行いで自らの愛でていた物を壊した、殺した。」
けれど停滞と沈黙に、俺は耐えられなかった。変化が欲しくなって、痛い目をみたことがある。
これがもし自分の身に降りかかっていたらと思うと、恐ろしくなる。
「そのまま」でいればどれだけ楽だろうか。止まり続けていれば恐ろしい変化に遭わずに済むのに、時は世界は停滞を許さない。
経過と変化によって傷つくこともあるだろうに、どうしてだろう。停滞と不変に頼っていれば終わらずに済むのに、どうしてだろう。
「物語はいつか終わる。でも、また新しいお話を考えればいいよねっ!」
「お……終わりや、別れを、迎えても……それは決して、悪いことばかりじゃありません……。もう一度、生まれ変わって……あ、新たな始まりを迎えることが、できるのですから……。」
この子達がこう言えるのは、何かが終わっても何かを始められる自信があるからなのかなぁ。俺の担当は強いな。
……結局そういうことなのか? 俺は未来を信じられないから現在が進むのが怖くて足を止めたくなるのか?
そういうこと、なのか……。そういうことかもしれない。